ぐしゃぐしゃになったベッドの中でうずくまって荒い息をする人物。


「きょ、恭介さん?」


ここまで接近してやっと私の存在に気づいたのか彼は顔を埋めていた腕の中からルビーに光る双眸を向けた。

いつもは能力を使った時にしか赤くならないのに。

私に向けていた視線も長くは続かず、再び苦しみ出す。見ていられなくて駆け寄り触れようとした時に彼は“触れるな”と拒否反応を示した。


「グッ……ハア、ここから、出てい、け」


「どうしたの!?なんでこんなことに!!」


息が苦しいのか恭介さんはうつ伏せから仰向けになる。額から汗がこぼれ落ちた。


彼の着ているワイシャツは前がはだけていた。無理矢理外したのかボタンは弾け飛んでいる。


はだけて覗いた体は傷だらけで、所々から流血していた。そして最近できたような傷だけではなく、古傷も見える。


一際目を見張ったのは左鎖骨に刻まれた黒い線で描かれた薔薇。それはまるで私のものと同じだ。


薔薇は恭介さんの体を締め付けるように蔓を伸ばし、右の顔半分ほどまで侵食している。


「ははははやく血を止めないと」


焦ってリュックからハンカチを引っ張り出して圧迫しようと近づいた。