朝食を食べ終わっても恭介さんは自室から出てくることはなかった。今日は夜叉さんが車で送ってくれるとおしゃったので甘えることにした。


先に外に行ってしまった夜叉さんを待たせるのは申し訳ないけれど、どうしても彼の様子が気になる。もし具合が悪いなら薬を渡した方がいい。


恭介さんの部屋の前で右往左往し、声をかけることに決めた。


__コンコン

ノックをしても返事はない。扉に耳を貼り付け聞き耳を立てても物音一つしない様子にいよいよ不安になる。


「恭介さん、入りますよー」


ドアノブを捻って初めて恭介さんの部屋に足を踏み入れた。家具は屋敷のものと一緒で豪華なものが置かれている。


これまでの彼の部屋の傾向を鑑みるに、綺麗好きだ。なのに彼の今の部屋はゴミや埃なんかはないものの散らかっていた。


花瓶はカーペットに落ちて割れていて水が染みをつくり、花びらが散っている。重厚なカーテンは閉じたままだが破けて、半分ほどはレールから外れていた。


__ハア、ハア


奥にあるベッドから苦しげな息遣いが聞こえた。静かに近づく。シーツはめちゃくちゃになっている。枕は壁まで飛ばされたのか、隅で横になっていた。