毎日このやりとりを耐え抜いて、やっと制服に腕を通す。カーディガンを着て、父に買い与えられたスマホを片手にリュックを背負う。


家を出てしまえば幾分か心は安らかになる。イヤホンで外部からの音をシャットオウトした。


家から歩いて30分ほどに位置している共学の高校が私の通っている学校だ。有名大学の進学実績があるところだ。


私が教室に入ると一瞬クラスが静かになる。窓側のいちばんうしろに座る。友達がいない私にとって特等席だ。


クラスメイトとは高校3年生になった今でも馴染めていない。というのも、家庭事情が広まってしまったこともあるし……


「うわ……来たよ、幽霊女。近づかないでほしいね」


幽霊が視えると噂されているから。


実際のところその噂は正解である。幼い頃から私は霊感が人一倍高くて、幽霊が視えていた。


気をつけてはいたのだけれど、うっかり高校でも幽霊に関わってしまった。それを目撃され付いたあだ名は幽霊女。


「あんたさ、いい加減目障りだから学校来んなよ」


机が蹴飛ばされて壁と当たって大きな音を立てる。私は俯いているしかできない。


「……なんとか言えよ」


「学校は、やめたくない……です」