Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

「……家具も大丈夫なようだし俺は自室に戻る。一階の扉の前に本が積まれた部屋だから荷解きが終わったら声をかけて」


恭介さんはそう言うと部屋からあっという間に出て行ってしまった。


「よしとりあえず教科書と本を本棚に入れよう」


私は気を取り直して手で持ってきた荷物を開け始めた。

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夢中になって作業を進めていると時刻は19時を過ぎていた。慌てて灯りをつけてカーテンを閉める。


部屋全体を見渡せばあらかた整理はできている。一階にそろそろ行かないと恭介さんを待たせているかもしれない。


冷蔵庫の中とかキッチンを見させてもらってからお夕食をどうするか早く決めないと。今日は簡単になってしまうけど明日からは頑張ろう、とか思って階段を降りる。


すると広いリビングには人影があった。待たせてしまったことを詫びようとしたが足が止まる。


この後ろ姿、恭介さんじゃない。


高そうな革製ソファから頭だけしか見えないが、彼ではないと思った。


その時私の気配に気づいたその人が振り返る。怪し気な緑の双眸が私を捉えた。きゅっと目元が細くなる。


「アンタここに住むことになったんだって?」