Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

多くのことは自分で叶えられてしまうであろう恭介さんのお願いとはなんだろう。首を傾げた。


彼は言うのを迷っているようで、そんな姿を見れてなんだか心温まる。


「これから一緒に住むのだからもう敬語はやめてくれないか？」


「そ、そんなことですか」


やっぱり言わないべきだったと恭介さんは首に手を当てながら言った。わずかに恥ずかしがる彼に笑みをこぼした。


「恭介さんが望むなら敬語はやめにしm……やめるね」


慣れない言葉遣いに詰まりながら言う。そしてある考えが私の中で思いついた。


「であれば私からも一つお願い、というかできればそうして欲しいというか」


「言って」


「恭介さんって未だに私のことを“君”って言うでしょう？せっかくだから名前で呼んでほしいなぁ、なんて」


目を見開く彼にやっぱり厚かましかったかと後悔した。しかし今度は恭介さんが笑いをこぼす番だった。


「そうだな、これからは“霞”と呼ぼう」


彼はそう手探りするようなためらった調子で言った。私はというと名前を覚えていてくれたこと、呼んでくれたとこに肩を撫で下ろす。


なんだかお互い照れくさく、気まずい空気が流れる。