《side.佐々木霞》
恭介さんとのオーストラリア旅で私は彼への恋心を自覚した。

クルーズの後オペラハウスでオペラを鑑賞後、来た時と同じように扉を潜るともうそこは日本で、私の家の玄関だった。


二言三言会話したのを朧げに覚えている。『なんでもいいから困った時は頼ってくれ』と言い残し彼は帰ってしまった。

後ろ髪を引かれる思いで静かに2階の自室へと向かった。

__それが一昨日のこと。


日曜は夢心地に浸り、一夜明け日常に戻る。熱に浮かされた夢だったのかと疑った。それでもオーストラリアの雑貨屋で恭介さんが買ってくれた栞やビーチで拾ったシーガラスと貝殻が現実だったのだと教えてくれた。


小さな幸せを書き留めるノートに多くの思い出を綴った。もはや小さな幸せじゃない。思い出の栞も挟んである。


今日は何を書こうかと頭の中で整理しながら下校し、家の前に着く。玄関の前にはトラックが止まってる。人が出入りしていて騒がしかった。


立ち止まっていると義母が玄関から外へ出てきて私を見るなり近づいてくる。


「お父さんが突然遠くへ転勤になったから、私と娘は付いて行くから。あんたも早く荷物まとめて出て行きなさい」


「へ……私も付いていくんですか?」


「あんたはもう高三でしょう。今まで育ててやったんだから、もう1人で生活しな」