彼女の夢を操作する。この子は大学と海外に行きたいのか、と思った。


「へえ、その女が最近お前が執着している子か!!なかなかの美人じゃねェか」


2人しかいなかったはずの部屋に第三者の声が響いた。正体を確認せずともヤツが誰かは容易にわかる。

また面倒なヤツが勘付いたものだ。彼女の美しい髪をさらりと一束掬う。悪夢から逃れた彼女はすうすうと小さな寝息を立てた。


「彼女に手を出すなよ、夜叉(ヤシャ)


一束の黒髪が俺の手から逃げる。名残惜しくも彼女から目を離し、ウィンドウベンチであぐらをかく男に振り返った。


艶やかな黒のウルフカット。先端にかけて徐々に緑に染まる長い襟足が楽しげに首を揺らすヤツの動きに合わせて踊っている。


俺の不老不死の呪いについて知っていて、当時から何かとちょっかいをかけてくる男。名を、夜叉という。


夜叉についても俺よりは劣るが能力を持っていて何故だか知らないし、知りたくもないが歳を取らない。


俺と大きく違うとすれば、ヤツは俺が視ることができない“過去”を視れて多少の干渉ができる能力があることぐらい。逆に未来は視れないらしい。


「そこまで言われると構いたくなっちゃうなァ。俺、お前が嫌がることするの大好きだし」