空になった土鍋の乗ったお盆を私の脚の上からテーブルへと恭介さんは移動させる。そしてサイドテーブルのライトの明るさを1つ落とした。
再び柔らかいベッドに体を沈める。視界の端でキャンドルが揺れている。
まだ私が眠くないことを察したのか彼はロココ調の1人掛けイスをベッドの側まで持ってきて腰を下ろした。
「……君のその鎖骨にあるアザは生まれつき?」
きっと首元を緩める際に見えたのだろう。確かに私の右鎖骨には黒い線で薔薇のようなアザがある。
自然にできたとは思えないほど精巧だから何度か刺青だと勘違いされたことがある。普段は服で隠れるから大して気にしていなかった。
「そうらしいです。これが見えるような服を着た時はいつもいたずらしてくる幽霊たちが恐れて逃げていくんで便利なんですよ」
「痛みは、ないのか?」
「全然ないですよ」
そうか、と恭介さんはホッと息を吐いた。そんなに痛々しく見えたのだろうか。会話を続けようとした時、椅子に腰掛けていた彼は私に手を伸ばす。
「眠れ。朝には熱が引いているだろうから」
私の視界を大きな手が遮る。暗くなる。指示に従って目を閉じた。
恭介さんの指が湿布を貼っていない方の頬を撫でる。こんなに安心して眠れるのはいつぶりだろう。再び眠りの波に飲み込まれた。
再び柔らかいベッドに体を沈める。視界の端でキャンドルが揺れている。
まだ私が眠くないことを察したのか彼はロココ調の1人掛けイスをベッドの側まで持ってきて腰を下ろした。
「……君のその鎖骨にあるアザは生まれつき?」
きっと首元を緩める際に見えたのだろう。確かに私の右鎖骨には黒い線で薔薇のようなアザがある。
自然にできたとは思えないほど精巧だから何度か刺青だと勘違いされたことがある。普段は服で隠れるから大して気にしていなかった。
「そうらしいです。これが見えるような服を着た時はいつもいたずらしてくる幽霊たちが恐れて逃げていくんで便利なんですよ」
「痛みは、ないのか?」
「全然ないですよ」
そうか、と恭介さんはホッと息を吐いた。そんなに痛々しく見えたのだろうか。会話を続けようとした時、椅子に腰掛けていた彼は私に手を伸ばす。
「眠れ。朝には熱が引いているだろうから」
私の視界を大きな手が遮る。暗くなる。指示に従って目を閉じた。
恭介さんの指が湿布を貼っていない方の頬を撫でる。こんなに安心して眠れるのはいつぶりだろう。再び眠りの波に飲み込まれた。



