制限された可動域で顔を上げると、いつもは余裕げな表情には焦りが見え心配そうに自らの腕の中にいる私を見つめていた。


「きょ、すけ……さんだ」


ずっと寒かった体が彼の体温によって温まられる。やっと安心できた。へにゃへにゃと足に力が入らず崩れる。


「おい!しっかりしろ」


そんな私に連れ添って彼も腰を落とし、私を階段に座らせた。体温を求めて珍しく声を荒げた恭介さんに擦り寄る。


引き剥がすでもなく彼は閉められていない自身の上着で私を包んだ。そして額と頬に手を当てる。


「熱か?」


「はい、寒くて……でも今日は失敗ばかりしちゃって……家から追い出されて」


そこまで言った私の口を恭介さんは手で覆った。これ以上言わなくていいと頭上から聞こえる。焦点が合わずぼやける視界で具合が悪くなって目を閉じた。


「少し揺れるがもう寝ろ」


不器用な手つきで彼は私の顔にかかった髪を避ける。手に当たった彼の服を握った。


「……大丈夫。次目が覚めた時もそばにいるから」


ゆっくりと自分の体が地から離れるのを感じた。体が上下に揺れる。それでも恭介さんの体温は確かにそばにあった。


私は深い眠りの沼へと沈んでいった。