《side.桜坂恭介》
__だれか、助けて

最初はそんな願いが聞こえただけだった。土砂降りの中で泣く彼女は今にも死んでしまいそうな絶望に飲み込まれた表情をしていた。


普通の人の未来は容易に見れる俺が、唯一未来を視れないのが彼女だった。助言してやりたいのに分からない。だから言った、小さな幸せを見つけろと。


それから数日後の今日、彼女に再び呼び出された。


帰り際に受け取った簡素な花束に視線を移した。ドライフラワーにしようと吊るしてある。


形に残るプレゼントは嫌いだ。それがたとえいつかは枯れる花だとしても。


みんな俺を置いて先に死んでいく。形が残るプレゼントは俺の罪を色濃く刻んだ。だけど、俺は彼女から受け取った霞草をドライフラワーにしようと思ってしまった。


どんなに豪華な花束よりも、彼女から貰った質素な花束の方が嬉しくて。枯らしてはいけないと思った。


「霞、か」


名前を呼んだちょうどその時、彼女から家に着いたと声が聞こえた。それから今日の感謝と、帰っている時に一番星を見つけたと付け加えられていた。


思わず広い家で1人笑みを零す。

俺も祈ろう。明日も彼女が小さな幸せを見つけられるように、と。