驚いていると彼は私の手から花束を攫う。そして優しい目つきでそれを見ていた。


「もらうよ、ありがとう」


「は、はい」


「君の希望通り家まで送らないけど、家に入ったら手を重ねて祈ってくれ。無事に家に着いたと」


「そうすれば恭介さんに届くんですか?」


「どういう原理かわからないが、君の祈りだけはよく聞こえるんだ」


そっか、だからあの雨の日も今日も。手を重ねて思ったから彼まで届いたのか。今後手を合わせる時は気をつけようと思った


「……君とはまた会うことになりそうだ。それじゃあな、霞」


瞬く間に恭介さんは姿を消した。彼が連れ去った霞草の香りを残して。