Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

ゆっくりと足が止まった。花束を持つ手は傷だらけで、顔も濃いくまができて疲れ切っている。ガラス越しで私の少し後ろで神様が私の様子を見つめていた。


「ご、ごめんなさい。行きましょ!!」


神様がどこに行くのかも知らないのに、私は足を止めた彼の前を進む。が、手首を掴まれて歩みは強制的に止まった。


「あー、甘いものは好きか?」

攫われた手首はすぐに離される。困ったように神様は目を泳がせながら言う。その様子が面白くて、離された神様の手を掴み返す。


「はい大好きです」


目を合わせて笑いながら言うと、神様は少しフリーズしてからプイと視線を逃した。


「行きつけのカフェがあるんだ。こっち」


私の手から逃げるように彼は再び歩き出した。さっきよりも歩くのが早い神様に早足でついていく。


__カランコロン

神様の行きつけはやはりすごい。ここら辺では一番有名なホテルに入っているカフェだった。しかも並んでいるお客さんの横を通り過ぎて顔パスで入店した。


店内の高級感にビビり倒して神様にくっついて歩く。こんなところ手に草を持った女子高生が入っていいところじゃない。


ウェイターさんが入れた水を飲むのでさえ怖い。そんな私の様子を見ては神様はくつくつと笑う。