Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

お金がない私なりの神様へのお礼だった。白い小さな花が沢山咲いている。


__霞草(カスミソウ)だ。


じっと出された花束を神様は見つめていた。


「受け取らないよ。君を助けたのは俺の気まぐれだ、礼はいらない」


そういうと彼は踵を返して花畑から出る道を歩いていってしまう。慌ててベンチに置いていたリュックを背負うと花束を片手に神様を追いかけた。


「どこまでついてくるつもりなんだ?」


「これを受け取ってくれるまではどこまでも」


「……」


「黙らないでください」


「警察に突き出そうか検討していた」


「そんなことしたら私は『この神様数日前に天気を無理やり変えてました』って政府に電話しちゃいますよ」


「それは億劫だな」


彼は楽しそうに口角を上げて言った。初めて神様の明るい表情を見た。嬉しくなって私の足取りも軽くなる。


神様について行くと街に入る。家の買い出し以外で買い物をしないから街に入るのはいつぶりだろう。


きらきらとした顔ではしゃぐ同年代の女の子が羨ましかった。ショーウィンドウに飾られている物に目を向ける。その度にガラスに映る自分の姿が嫌いだ。