《side.佐々木霞》

過去で刺されて息絶えた私はいつの間に現代に戻っていた。後から夜叉さんに尋ねると戻る条件はその時代で死ぬことがトリガーらしい。


目を開けて、夜叉さんに一番に確認したことは恭介さんの生存だった。


__彼はいなかった。


過去に戻って会いに行ったのにも関わらず、恭介さんの判断は変わらなかったのだ。


過去で数ヶ月を過ごしたものの現代では、数週間しか時間は進んでいなくて夏休みが終わろうとしていた時期だった。


そうして恭介さんを置いて季節は巡って、今日私は高校を卒業する。




いつも通りに制服の袖に腕を通してリュックを背負う。テレビを見ている夜叉さんに挨拶をして家を出る。


夏休みが終わる前日に夜叉さんに渡されたものがある。あのブラックカードと桜坂財閥会長さんの名刺だった。


名刺には「困ったことがあったら助けるようにお願いしてあるから頼ること」と書いてあった。


合格したお屋敷から近い都市近郊にある大学の費用は会長さんが面倒見てくれている。優しいおじい様で、月に一度お茶会が催されている。



学校までの長い道のりをひとり歩く。毎日学校に行くにはだいぶ早い時間に家を出ていた。距離があるからっていうのもあるけれど、することがあるのだ。