ぶすりとカスミの薄い体に刀が突き刺さり、突き抜けた。左胸、心臓をひと突き。それから彼女の体は投げ飛ばされて宙を舞う。


動けなかった。


どさりと力なく俺と輩たちの間に落ちた。野原に咲いていたはずの花々は無惨にも潰れている。


走り寄って彼女の体を起こした。ごぶりと大量の血が口から流れる。


「生きてください。あなたはこのようなところで死んではいけません」

小さな、吐息のような彼女の震える声に耳を傾ける。


「死ぬな……死なないでくれ、頼むから。俺を置いていくな……ひとりにしないでくれ」


俺の頬に触れていた暖かな手がずるりと落ちた。よく晴れた日だった。


__たとえ恋い慕う人が運命に巻き込まれようと決して死んではいけない


この言葉はこの時のためか、はたまたまた違うことのためか。


それでもカスミと交わした“約束”を破るわけにはいかない。


彼女の体を名残惜しくも冷たい地面へと置いた。自らの頬を伝う涙を汚れた手で拭う。


(カタワラ)に投げ置いた刀を握る。そこからは地獄だった。


斬り掛かってくる者を斬り返す。身体中血だらけになった。なぜ立っていられるのか自分でもわからない。


しかし武神と呼ばれた俺も数には勝てない。


ついに押さえつけられ、体を一突きだった。意識が朦朧とする。虫の息で死んだも同然の俺を放置して敵は引き下がっていく。

苦しい、苦しい、熱い、寒い。