Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

それからさらに2週間が経った。昼と夜が繰り返され、世界は喜劇と悲劇が繰り返させる。


そして私にとっては悪い知らせが恭介さんの口から告げられた。


「……戦、ですか」


「ああ、元々要請はかかっていて明日から屋敷を空ける」


数日前からお屋敷全体が忙しなくなってきて、お菊さんから情報は聞いていた。知ってはいたけど彼の口から告げられるとまた現実味が増してくる。


「ここは城下に近いし、この屋敷にも兵は残していくからカスミは安心して過ごしてくれ」


「次の季節……秋には帰ってきますか?」


「早く片をつけられるよう努力はする」


震える私の両手をそっと恭介さんの手が包み込む。戦がどんなところなのか知らない。教科書で習ったって、勝敗くらいしか知り得ない。


だけど、彼が傷ついて帰ってくることくらい予想がつく。


「初めてだ。心の底から生きて帰ることを望むのは」


「え……?」


「もちろん家臣や領地の者のために帰らなければならなかったが、初めて戦の前に緊張している」


初陣だってこんなに冷たくなることはなかった、と彼は自らの指先を私の手の甲に当てた。

確かに氷のように冷たい。