「ごめんね、いま食べられるもの持ってないんだ。お金も家だし……ごめんね。助けてくれてありがとう。また会えたらなにか用意しとくね。元気でね、猫ちゃん」

 猫ちゃんの「……なぁーん」という寂しそうな返事に、胸がしめつけられる。

 無責任に動物を拾ってきてはダメよって、おばあちゃんが言ってた。

 動物を飼うということは、命を預かるということ。


 猫ちゃんのつぶらな瞳に少し後ろ髪を引かれながら、私は背を向けて歩き出した。


 中志津くんやクラスのみんなも、今頃夏宮くんを探してるのかな。
 
 中志津くんたちのほうが夏宮くんの行きそうなところが分かるはず。

 私なんかが勝手に当てずっぽうで探し回ったって、見つかりっこない。

 それにしても……駅前があんなに治安の悪いところだったなんて。

 夏宮くんのことがよけいに心配になる。

 ……夏宮くんが、はやく見つかりますように。