「へへ、みんなおーはよー♡」


 ニコニコ笑顔の紗英が、心の腕に自分の腕を絡めてピトッとくっついた。

 ぶわっと、鳥肌が立った。


「え⁉ なにその感じ⁉ おい、まさか二人って……⁉」


 クラスメイトの声に、女の子らしい顔で見上げる紗英とアイコンタクトした心が、まるで何でもないことのように言った。


「うん。付き合ってる」


 クラッと眩暈がした。

 展開の速さに、頭が追い付かない。


 クラスのみんながわっと湧き上がった。


「フゥ~!」 「おめでとー!」 「いつかそうなると思ってた!」 「お似合い~!」


 心が無事に帰ってきたことに加えて人気者同士のカップル誕生に、教室中がお祭り騒ぎになった。


「紗英……!」


 隣にいたセイラが紗英に駆け寄って、抱きつく。


「よかったね……!」


 セイラが涙声で言うと、紗英も目を潤ませて「うん……っ」とセイラの背中に手をまわして力強く抱き合う。

 いわゆる、感動のワンシーン。

 それをただ見守るだけの私は、自分がひどく残念な人間に思えてしまって、自分ひとりだけ違う世界に来ちゃったような気がして。

 いっそ本当にそうだったらいいのに、なんて思うくらいには、私は目の前の事実を受け止めきることができなかった。