「沢田、今から着替えに行って来るから、30分後に迎えに来てくれ」
「承知しました」

自社ビルの社屋にある自室を出て、上階にある自宅フロアへとシークレットエレベーターで上がる。
急な連絡を受け、着替えをする為に自宅へと急ぐ。

今朝、出勤後まもなくに入った情報で、今手掛けているプロジェクトのキーパーソンとなる人物(マーク・ハリス)が緊急来日したという情報。
四六時中忙しい彼は、この俺でも中々アポイントが取れず、困り果てていた。

そんな中、日本贔屓の奥方の希望で、来日したという。
こんな奇跡的なチャンス、逃したら一生後悔する。


エレベーターから下りた俺は、ネクタイの結び目の解きながら玄関ドアを開けた、次の瞬間。

「ッ?!……杏花っ」
「おかえりなさい」
「何で、いるの?店は?」
「スタッフに任せて来たわ」
「……沢田に頼まれたのか?」
「フフッ、バレバレよね」

玄関ドアの先に、愛妻の杏花が立っていた。
しかも、目を疑うような恰好で。

「もしかしなくても………??」
「妻として、夫の助けになるなら、どんなことでもしないとね♪」
「っ……、マジで助かる」
「ほら、時間が無いから急いで」
「あぁ」

俺の腕を引く杏花と共に、上階へと駆け上がった。

ウォークインクローゼットに到着すると、既にウェアが用意されていて、さりげなくリンクコーデになっている。
俺は素早くスーツからそれに着替えた。