もう、言葉なんかいらなくて良いくらい酔いしれていると、ドタドタと走ってくる足音が聞こえ、犬飼くんの胸から咄嗟に離れた。
ドアを勢いよく開けられ、現れたのは酷く息を切らしている永上くんだった。
「犬飼くん! 皆が謝りたいって。あ、理由思い浮かばなくて過去のこと全部喋っちゃった、ゴメン……」
…………な!!
私と永上くんだったから、犬飼くんは心開いてくれたのに!
「ちょっと、永上くんはなんでそう余計なことをベラベラと!」
慌てて口を開くと、犬飼くんは、大丈夫、と、私の背中をポンと押した。
「クラスの奴らと友達になるから大丈夫」
「……わ、私は?」
「好きだから、友達になれない」
さりげなく『好き』だと気持ちを伝えてきた犬飼くんに、私の鼓動はバクバクとうるさく鳴り響く。
「犬飼くん、はやくー!」と急かす永上くんに腕を引かれ、犬飼くんは私の前から姿を消してしまった。
さっき、言葉じゃ上手く伝えられないって言ってたのに。
好きなんて言われて、私はこれからどういう風に犬飼くんと接すればいいの!?
ああーもう、頬が熱い。
ほんっとに、
犬飼くんはむずかしい。
END



