犬飼くんはむずかしい



 女性として、見ちゃいけない?



 わけが分からず振り返ると、犬飼くんは切なそうな、愛おしそうな顔で私を見ていた。



 ――――そんな顔、勘違いしそうになる。犬飼くんの赤くなっている顔を見て、私も顔を赤くしてしまった。



「本当は友達もいらないって思ってたから、だから、上野さん以外と話したくなかっただけ」


「…………そ、そうだったんだ」



 犬飼くんがクラスの皆と話さない理由が今、ここでやっと腑に落ちた。



「上野さんも男として俺を見て。意識して、ドキドキして」


「――う、うん……」


「俺はもう、上野さんのこと、女として見て、意識して、ドキドキしてるから」


「――え、それって……?」


「まだ、今はこの気持ちを大切にしたいから、だからあえて伝えないけど。上野さんだけは友達になってあげられないから、覚悟して」



 そう言って、犬飼くんの手を引っ張り抱き寄せた。



 犬飼くんのドキドキが直に伝わってくる。



 私も、今はこのドキドキを大切にしたい。けれど、犬飼くんは絶対にこの先もモテ続ける。



 不安で不安でたまらないよ。



「その気持ち、言葉にしてくれなきゃ分からない」


「んなこと言われても、こんな気持ちになったの初めてなんだし、言葉じゃ上手く伝えられない」