「その様子じゃ、今まで通りにする気ないだろ」
「だ、だって……」
後ろを向いているから、今は犬飼くんの顔は見えない。だから、今なら自分の気持ちを吐き出せる気がする。
「私、友達に……犬飼くんと友達になりたくて……」
「うん」
「でも、犬飼くんは永上くんに『ムリ』って言ったから、私とも友達になってくれないだろうなって思って……」
「うん」
「だからクラスメイトとして……これからも接するしかないんだなって」
「そうだな。逆に言えば、俺、世界中の人間と友達になれたとしても、上野さんとは友達になれないかも」
――今、私は犬飼くんから全否定されてしまった。発する言葉も見つからずに黙っていると、犬飼くんはまた喋り始めた。
「本気で永上くんに友達になりたくないって言ったわけじゃなくて、ああいう冗談を言いたかったんだよ。だから永上くんとは友達になる」
「……で、でも、私とは友達になれないんでしょ? それは嘘じゃないんだよね?」
「うん。なれない。友達になったら上野さんのこと女性として見ちゃいけないと思うし」



