過去にあんなことがあったんだ。なかなか心を開くのは難しいと思う。
――私も、私も犬飼くんと友達になりたかったな……
手を胸に抑え、ズキンと痛む鼓動を落ち着かせる。永上くんはというと、「とりあえず、皆に誤解解いてくるから、話はそれからだ!」と、泣きながら空き教室を出ていってしまった。
犬飼くんと二人、取り残される。
今、この空間に二人でいるのがツライ。この原因はもう、考えなくても分かっている。
――犬飼くんと学校生活を共にして二週間だけど、私は犬飼くんを好きになってしまった。
「わ、私達も出ようか」
ドアの前まであるき出す私に、犬飼くんは「まって」と、呼び止めた。
友達にさえなれないのに、
……なんでこのタイミングで呼び止めるの。
犬飼くんを見ると泣いてしまいそうで、
「………大丈夫だよ、私は今まで通り変わらないし、これからも、今までみたいによろしくね」
表情を悟られないように、言葉だけ投げかける。すると、犬飼くんの手が私の手に触れた。
熱が伝わる。
犬飼くんの手が少し震えていたのが伝わってきた。



