「……そっ」
『そんな……』と、やるせない表情を浮かべる永上くんの腕を引っ張る。
「先生には喧嘩があったこと、絶対言っちゃダメだよ!」
ほら、急いで!と、永上くんを急かしながら教室までたどり着いた。
教室では尻もちでもついたのかと思うような体制で、下を向いている……犬飼くん?
犬飼くんの口からはじんわりと血が滲んでいて、頬も腫れていた。犬飼くんがこの状態なら相手はどんな顔になっているのかと、ヒヤヒヤしながら見ると、息を切らして犬飼くんを睨んでいるだけで、殴られたりはしていないようだ。
クラスの皆は怯えた表情で犬飼くんを見ていた。
「犬飼くん、大丈夫!?」
急いで犬飼くんの元へ駆け寄ると、犬飼くんは眉間にシワを寄せ「ああ」と頷いた。
何があったのか聞いてみるも理由を言おうとしないため、永上くんの目の前にいる殴ったであろう男子に「何があったの!?」と、問いかける。
「……話しかけてんのに犬飼が無視するから……」
「だからって殴っていいと思ってんの!?」
キツく睨みつけると、男子は『いや、ちがう! 俺、殴ってない!』と、殴ったことを否定し始めた。



