「え、いいの?」
新海くんが、わたしの顔と手元のカツサンドを交互に見る。
「うん、もちろん。ていうか、もらってもらわないと困る。自分の分は他に用意があるし、新海くんがもらってくれなかったら余っちゃうから」
そう言うと、わたしはカツサンドをグイッと強引に新海くんの手に押し付けた。
なんだかちょっとかわいげのない言い方になっちゃった気がするけど。
ただお礼を渡すだけなのに、妙に胸がドキドキしてしまうのだから仕方ない……。
渡されたカツサンドにジッと視線を落としている新海くんを見ていると、ふいに顔をあげた彼が優しい目をしてにこっと笑いかけてきた。
「ありがとう」
「ううん、こっちこそありがとう。じゃあ、わたしはこれで」
お礼にお礼を返して立ち去ろうとしたら、新海くんが目を瞬く。
「え、ニコちゃん。ほんとに、わざわざこれを渡すためだけに来てくれたの?」
「うん……。今日は約束の日じゃないし」
そりゃあ、できることなら、このまま新海くんと一緒にお昼を食べたい。
だけど、カノンとアキナに「すぐ戻る」と言って教室を出てきたし。
戻らなかったら、きっと怪しまれる。どんだけ長いトイレなんだ、って。



