「うん、えーっとね。新海くんに渡したいものがあって」
どぎまぎしなら新海くんから微妙に視線をそらすと、胸に抱いていたカバンを探る。
そこから目当てのものをみつけて新海くんのほうに差し出すと「え?」と彼が不思議そうにまばたきをした。
「昨日のキーマカレー、すっごく美味しくできたんだ。新海くんに教えてもらったとおり、トッピングも用意して盛り付けしたら、お母さんもすごく喜んでくれて。だから、お礼」
わたしが新海くんに差し出したのは、コンビニのカツサンド。
朝、自分用のお昼ごはんを買うときに見つけて、いっしょに買ってきた。
サンドイッチコーナーでカツサンドを見つけて、前に新海くんが好きって言ってたなぁって思い出して。
昨日のキーマカレーのアドバイスのお礼として昼休みに渡しに行けば、喜んでもらえるかなと思ったのだ。
コンビニで自分のお昼ごはんをカツサンドを買ったあとは、どうやって渡すか考えて頭がいっぱいになっていて。
授業中も五分間の休み時間も、少し冷めた目をして教室の席にひとりきりでいる新海くんの金色の頭を見つめながら、ずっとそわそわしていた。



