「え、大丈夫? ニコちゃん。保健室行く?」
アキナが開けかけていたお弁当箱のフタを閉じて、立ち上がる。
「ニコちゃん、保健室付き添うよ」
アキナに続いて、カノンまでもが立ち上がろうとするからちょっと焦った。
「いいよ、いいよ。ちょっとトイレに行きたいだけだから」
「え、お腹痛いって、そっち?」
カノンもアキナも苦笑いで、浮かしかけた腰を椅子におろす。
そっちって、どっち……?
カノンとアキナがわたしの復痛の理由をどう解釈したのかはわからないけど、うまく教室から抜け出せそうな空気になったので、ほっとした。
「ごめんね。ちょっとトイレ行って、すぐ戻ってくるから。ふたりとも、先にお昼食べてきて」
「はいはーい」
わたしはカノンとアキナに小さく手を振ると、カバンを抱えて教室を飛び出した。
そのまま小走りで向かったのは、新海くんといつもお昼を食べている中庭。
月曜日は一緒にお昼を食べる日ではないけれど、新海くんに渡したいものがあったのだ。



