スーパーでシュレッドチーズと四個一パックの温泉卵を買って家に戻ると、エントランスのところでちょうど仕事から帰ってきたお母さんに出会った。
「あら、仁瑚もどこかに出かけてたの? 遅くなったけど、これからごはんにするね」
お母さんは、わたしが今行ってきたのとは別のスーパーに寄ってから帰ってきたらしい。腕にかけたエコバッグの中には、野菜や肉などの食材が入っていた。
「実はね、今日はもうできてるよ」
わたしがそう言うと、急ぎ足でアパートの階段を駆け上がろうとしていたお母さんが振り返る。
「できてるって……。仁瑚、今週もごはんの用意しておいてくれたの?」
「うん、先週のカレーはちょっと失敗だったから……。でも、今日こそはうまくできてると思う。あとは盛り付けるだけだから、お母さんはゆっくり座って待ってて」
照れ笑いでそう言うと、今にもこぼれ落ちてきてしまいそうなほど大きく目を見開いているお母さんのそばをすり抜けて、先にアパートの階段を上る。



