「あ、君。同じクラスの、中村 ニコちゃん」
「え、あ、はい……。中村仁瑚です。新海くん、わたしの名前知ってたんですか?」
怖い人だと思っていた新海くんに、いきなり「ニコちゃん」なんて言われて驚く。
「そりゃあ知ってるよ。同じクラスだし、出席番号も近いじゃん」
目を瞬くわたしに、新海くんはあたりまえみたいにそう言った。
「ニコって、いい響きの名前だよなーって思って、中村さんの名前は名簿見て一番に覚えた。ニコちゃんて、呼ぶほうも呼ばれたほうも笑顔になれそうでいいよな」
新海くんが、ものすごく優しい目をしてふわっと笑う。
気やすく「ニコちゃん」と呼ばれたことも、わたしの名前を一番に覚えてくれたらしいこともびっくりだけど。
それ以上に、教室では無表情でいる新海くんに笑いかけられたことが、もっとびっくりだ。
新海くんて怖い人でもワルい人でもない……、のかな?
優しい笑顔に胸がドキンと高鳴って、わたしの中の新海恭平のイメージはぐるんと一八〇度ひっくり返った。
もちろん、良いほうに。



