「あー、えっと。あ、空き教室。バドミントン部の友達と」

 視線を左右に揺らして言葉を詰まらせるわたしを見て、カノンがほんの少し眉をひそめる。その些細な仕草に、わたしの胸はまたドキッとした。

「ニコちゃんがバドミントン部で仲良いのって、三組のハルちゃんとエミちゃんだよね。さっきトイレに行ったとき、ふたりが教室でしゃべってるところ見たけど……」

 ニコちゃん、ほんとうに空き教室でバドミントン部の友達と食べてた?

 途中で言葉を濁したカノンだったけど。ほんとうは、そう聞きたかったんだろう。

 真っ直ぐに見つめてくるカノンの目は、わたしのことを怪しんでいる。 

「あ、えーっと。空き教室でごはんは食べたんだけど、食べ終わったあとすぐにハルちゃんたちと別れたの。ちょっと、その……図書室に寄りたかったから」

 頭の中でめちゃくちゃ考えて言いわけすると、今度はアキナが「えー」と驚いたように目を見開いた。

「ニコちゃんって本読むっけ? ニコちゃんから、図書室に寄るなんて話初めて聞いたんだけど」

 本気で驚くアキナを見て、失礼だなって思いつつ。下手なウソをついてしまったことを反省する。