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中庭を出たあと、空っぽのお弁当箱の入ったミニトートを振りながらうきうき気分で歩いていると、教室に一番近いトイレの前でカノンとアキナに出くわした。
「あ、ニコちゃん。おかえりー。なんかご機嫌だね」
「ほんとだ。なにかいいことあった?」
トイレを済まして出てきたところらしいカノンとアキナが、わたしの顔を見てニンマリとする。
「え、いや。別に」
ほんとうは、新海くんとライン交換できたっていうめちゃくちゃいいことがあったんだけど……。
中庭でのランチタイムはわたしと新海くんのふたりだけの秘密だから、カノンとアキナには話せない。
それにしても。わたし、そんなに顔に出てたかな。
少し恥ずかしくなって頬に手をあてると、隣に並んだカノンがわたしの横から顔を覗き込んできた。
「そういえばさ。ニコちゃんは、お昼、どこで食べてたの?」
首を傾げたカノンの真っ直ぐな綺麗な髪が、制服のシャツの肩口でさらりと揺れる。
どことなくお嬢様っぽい雰囲気のあるカノンは、顔立ちも整っていてすごく美人だ。カノンの形の良いアーモンド形の瞳にジッと見つめられて、ドキッとする。
ただ何気なくこちらを見ているだけで、カノンからしてみれば、その仕草にきっと深い意味なんてないんだろうけど。
新海くんとの中庭の秘密を抱えているせいか、カノンのまなざしはわたしを変に動揺させた。



