初恋ランチタイム


 お世辞にもおいしいとは思えないカレーを文句も言わずに完食してくれたお母さんの顔を思い出すと、今もちょっと複雑な気持ちになってしまう。

 前に卵焼きとお味噌汁に挑戦したときは下調べせずに感覚で作ちゃったけど、レシピを見ながらならカレーくらい楽勝でしょ。

 そんなふうにタカを括っていたものだから、できあがった薄いカレースープを前にして、料理にもセンスが必要だなって思ってしまった。

 練習してるうちに料理がうまくなったという新海くんには、きっと、もともとのセンスがあったんだと思う。

「また近いうちにリベンジすれば?」

 浮かない顔でモグモグとお弁当のおかずを食べていると、新海くんがわたしを励ますように明るく笑いかけてくる。

「んー、そうだね……」

「なんか、あんまり乗り気じゃないな」

「だって今日のお弁当みたいにチンして詰めるだけなら簡単だけど、野菜の皮を剥いたり切ったりして一から料理するのって時間かかるし。また失敗しそうだもん」

「じゃあ、なるべく少ない材料で作れるカレーでリベンジするのは?」

「少ない材料?」

「うん。おれの家は、たまにキーマカレー作るよ」

「キーマカレーって?」

「こんなの」

 新海くんがスマホで検索して、ひき肉を使って作ったカレーの画像を見せてくれる。