「まあ、いいや。で?」
「でね、結論を先に言うと、ちょっと失敗だったの」
「もしかして、スパイス使って作ろうとしたとか?」
「まさか。使ったのは市販のカレールウだよ」
「なのに失敗したの? 材料も分量も作り方も箱の裏に全部書いてあるじゃん」
新海くんが怪訝そうに眉根を寄せる。
「そうなんだけどね。ルウを半分にしたら、水の量も半分にしなきゃいけないでしょ。なのに注意書きをちゃんと読んでなかったから、一箱分の分量で入れちゃって……。とろみのない、薄いカレースープみたいになっちゃった」
「ああ、なるほど……」
「それに、ルウ入れる前の野菜の煮込み時間も足りなかったみたい。人参もじゃがいももちょっと固かった。思ってたのと全然違うカレーになっちゃったのに、お母さんは『おいしい』って嬉しそうに食べてくれるから、誕生日なのになんだか申し訳ない気分になっちゃったよ」
「作ってくれたニコちゃんの気持ちが嬉しかったってことでしょ。喜んでもらえたならよかったじゃん」
「そうだけど……」
どうせなら、ちゃんとおいしくできたものを食べてもらいたかったからちょっと残念。



