「ありがとう」
お礼だけ言って、ひとまず自分の持ってきたお弁当を食べる。
「今日は頑張ってお弁当を作ってみたけど、やっぱり新海くんとじゃ全然レベルが違うなー」
冷凍の春巻きを齧りながらつぶやくと、「そんなことないって」と新海くんが謙遜する。
「そんなことあるよ。料理を作るのにも、勉強とかスポーツと一緒でセンスとか才能が必要なんだと思う」
「そうかな」
「そうだよ」
強く肯定すると、新海くんが驚いたようにパチリと目を瞬かせた。
「さっきも少し話したけど、わたし、週末にスーパーに買い出しに行ったの。ちょうど日曜日がお母さんの誕生日だったから、何か作ってあげようと思って」
「へえ。すごいじゃん。なに作ったの?」
「カレーだよ。小学校のときの林間学校で作ったからうっすらとだけと作り方の手順はわかるし、母の誕生日と言えばやっぱりカレーかなって」
「それ、母の日じゃなくて?」
「誕生日でしょ」
まじめに答えたのに、新海くんにふっと笑われた。



