初恋ランチタイム


「せっかく自分で弁当持ってきたのに、おれのおかずばっかり食ってたらいつもと変わらなくない?」

「だって、新海くんの作るおかずが毎回おいしすぎるんだもん」

 春巻きの入った口をもごもごさせながら答えると、新海くんがハハッと笑い声をあげた。

 目を細めて笑う新海くんの雰囲気は教室にいるときよりもずっとリラックスしていて優しくて。中庭でだけしか見られない、新海くんの表情に胸がドキドキしてしまう。

 横顔をじっと見つめていると、新海くんがわたしを振り向いて、「ん?」と首を傾げた。その仕草に、また胸がきゅんとした。

 だけど、新海くんの笑った顔が好きで見てましたとは言えないから。慌てて、ぶんっと首を横に振る。

「べ、べつに。なにも」

「ふーん。ここ置いとくから、適当にとって食べてね」

 新海くんがそう言って、春巻きのチーズ入りの春巻きが入ったタッパーをわたしたちのあいだに置いてくれる。

 タッパーの中には、あと三つ春巻きが残っていた。

 おいしそう。

 ほんとうなら、すぐにでもみっつめの春巻きに箸を伸ばしたいところだけど……。そうしたら、また新海くんに笑われそうな気がする。