「ありがとう。いただきます」
ひとつもらって、齧る。
今朝揚げたという新海くんの春巻きは、冷めていたけどまだサクサク感が少しだけ残っていた。
新海くんの妹が気に入っているというだけあって、チーズの味がアクセントになってておいしい。
「チーズ入りの春巻き、おいしいね!」
揚げたて食べたら、チーズがとろけてもっとおいしかったんだろうなあ。そんなことを考えながらひとつ目を食べて、すぐにふたつ目にも箸を伸ばす。
大きく口を開けてそれにかぶりついこうとしたら、新海くんがわたしからさりげなく視線をはずして笑いを堪えていた。
「え、なに?」
しばらくして新海くんが大口を開けたわたしのことを笑っているんだと気付くと、一気に顔が熱くなる。
また、夢中になって頬張っちゃった。
恥ずかしくなって、大きく開けていた口を閉じる。
でも、もらった春巻きは食べたいから、口の大きさを控えめにして少し齧った。それを見て、新海くんはまた笑いを堪えている。



