「なに?」
「ううん、別に。それより、朝から春巻き作ったってすごいね。具材を巻いて揚げてたら、時間かからない?」
「かかるよ。だから夜ごはんのおかずとして多めに作って、弁当用にいくつか取り分けて、揚げる前に冷凍しといた」
「じゃあ、これも昨日の夜ごはんの残りってこと?」
「正確には、おとといの夜ごはんの残りかな」
「ふーん。それにしても、新海くん家の春巻きは珍しい具材入れるんだね」
「肉入りの一般的なやつも作るんだけど、ずーっと前、肉入りのわりと一般的な春巻き作ったときに、皮を買いすぎて余っちゃったことがあって。実験的に家にあった具材をいろいろ入れて変わり種作ったんだよね。納豆とか、梅干しとか」
「えー、納豆?」
「納豆も、揚げてみたら案外悪くなかったよ。でも、妹がこのチーズとカニカマ入りのやつを一番気に入っちゃって。それ以来、たまに作ってって頼まれる」
「そうなんだ。チーズとカニカマ、相性は良さそう」
「うん。弁当にも使えるしな。よかったら、どうぞ」
新海くんからチーズとカニカマ入りの春巻きをタッパーごと差し出されたからには、箸を伸ばさないわけにいかない。



