「これ、ありがとう」
食べかけのからあげを、モグモグ、ゴクンと喉の奥に押し込むと、空っぽになったタッパーを新海くんに返す。
「どういたしまして」
タッパーを受け渡すとき、新海くんの手に軽く手が触れて。わたしの心音は、ドキドキとまた少しだけ速くなった。
誰かと手があたってドキドキしたことなんて、これまで一度もないのに。変だな。
触れたほうの手を反対の手のひらでぎゅっと握り込むようにしてうつむいていると、タッパーを片付けていた新海くんが「あ」とつぶやいた。
カバンの中からスマホと取り出した新海くんが、何かメッセージを打ち始める。
食べかけのお弁当をそっちのけで誰かとメッセージのやりとりを始めた新海くん。
その横顔をぼんやり見ていると、わたしに視線に気付いた新海くんが、「あ、ごめん」と謝ってきた。
「ちょっと父さんから。今日は父さんが妹のお迎えに行くって言ってくれてたんだけど、やっぱり遅くなりそうだからおれに頼むって」
「そうなんだ。あ、ねえ。妹の写真とかないの?」
よく新海くんの話題に出てくる妹って、どんな子なんだろう。
ふと気になって訊ねると、カバンの中にスマホをしまおうとしていた新海くんが動きを止めた。
「あるけど……」
「見せて、見せて」
「いいけど……。最近、おれがカメラ向けたら変顔ばっかりするから、あんまりいいやつないよ」
新海くんはそう言うと、スマホのロックを解除して妹の写真を探し始めた。



