わたしのお母さんは、カノンやアキナのママたちみたいに料理がうまいわけじゃない。彩りの綺麗なお弁当が作れるわけでもない。
でも、学校のイベントの日に作ってもらうお弁当は、いくつになってもトクベツに感じるものだ。
「忙しいのはわかる。夜勤明けで疲れてたのもわかる。でも、でもさー。たまのお願いなんだから、ちゃんと覚えててほしかった」
直接ぶつけられないお母さんへの不満をブツブツとこぼしながら、中庭の隅にある花壇に向かって歩く。
あそこならあまり人が来なさそうだし、校舎の陰になっているから安心だ。
そう思ったのに、中庭の花壇には既に先客がいた。
ド派手な金色の髪をした男子生徒。彼の姿を目にした瞬間、びっくりして口から心臓が飛び出すかと思った。
わたしと同じ、一年二組の新海 恭平くん。
学校内のどこにいても目立つほど明るい金髪の彼は、わたしたち一年生のあいだで――、というより、学校中の有名人だ。
中学の入学式にたったひとりだけド派手な金髪で参加した彼は、新入生やその保護者たち、教職員たちをざわつかせ。
『今年の一年に、めちゃくちゃ派手でワルいやつが入ってきたらしい』
入学式の翌日には、そんなウワサが学校全体に広まった。



