中学に入ってから、わたしはカノンとアキナのふたりと仲が良い。

 カノンのママはインテリア系の記事を書いている人気のトップブロガーらしく、いつもお弁当の彩りが良くて綺麗だ。(カノンいわく、インスタやブログに載せるための仕様らしいけど)

 アキナのママは都内の外資系企業で働いているキャリアウーマンらしいのだけど、いつも栄養バランスの良さそうなちゃんとしたお弁当を持ってきている。

 カノンとアキナはわたしの家庭事情は知っていて、わたしが週に数回お昼ごはんにコンビニのおにぎりやパンを持っていくと「いいなー」と、逆に羨ましがってくれるのだけど。

 体育祭の日まで、カノンたちの前でコンビニおにぎりを出すのはさすがに少しはばかられる。

 もちろん、カノンたちはわたしが体育祭の日にコンビニおにぎりを出しても意地悪を言ったりはしないだろうし、わたしがいつものようにコンビニおにぎりを食べててもなんとも思わないだろう。

 だから、ふたりの前でコンビニおにぎりを堂々と出せずに逃げ出してしまったのは、単純にわたしが見栄っ張りなせい。


「ごめんね、仁瑚(にこ)ちゃん。次は絶対に気を付けるから」

 不貞腐れた顔で出かけようとするわたしに、両手を合わせながら申し訳なさそうにコンビニおにぎりを差し出してきたお母さん。

 その顔を思い出したら、治まっていたはずの苛立ちが、また少し込み上げてくる。