初恋ランチタイム


「わたしのお母さん、病院の外科病棟で看護師やってるんだけど、どんなに忙しくても家事や子育てを平気な顔でやっちゃうんだよね。だからうちは、何でもお母さんがやるのがあたりまえって環境ができちゃってて、新海くんの家みたいに家事を分担するっていう発想がわたしの中で全くなかったの。昨日、新海くんが自分でお弁当作ってるって知って、わたしも料理に挑戦してみたわけなんだけど……。びっくりするくらいうまくいかなくて、これまでお母さんの大変さに気付かずに甘えてたなーって反省した。このおにぎりも卵焼きもおいしいし、ほんとうにすごいと思うんだよ。新海くんのこと」

 食べかけの梅干しと紫蘇のおにぎりを少し持ち上げて尊敬の念で見つめると、新海くんが「ニコちゃん、おおげさ」と吹き出すように笑った。

「おれだって、初めからうまくできたわけじゃないし、卵焼きなんてうまく焼けるようになるまで結構練習したよ」

「そうなの?」

「そりゃ、そうだって。どうやったらうまく焼けるかネットで検索したりとか、You tubeの料理動画見たりとか」

「そうなんだ」

「だから、ニコちゃんも、練習したらうまく卵焼き作れるようになるよ」

「こんなふうに、つやつやのふわふわに?」

 新海くんのことを疑いの目で見つめながら、お弁当箱の中の卵焼きを指差す。