「昨日ケンカしたって言ってたけど、お母さんと仲直りできたんだ?」
「ケンカって言っても、わたしが一方的に拗ねてただけなんだ。新海くんが自分でお弁当作ったり、お父さんと家事を分担してるって聞いて、お母さんがお弁当を作ってくれなかったくらいで不貞腐れてた自分に反省した」
「いや。おれだって、母親が生きてたら弁当なんて作ってなかっただろうし、家の手伝いもしてなかったよ」
「ああ、そっか。話してなかったけど、実はうちは新海くんちとは逆で、お母さんはいるけど父親がいないの」
「そうだったんだ……」
新海くんの瞳が翳り、声のトーンが下がる。
わたしが父親がいないと言ったから、いろいろと深読みして気遣ってくれたのかもしれない。だけど、気遣いは不要だ。
「でも、わたしのお父さんは生きてるよ。うちの両親、わたしが幼稚園に上がる前に離婚したの」
「そうなんだ」
「離婚してから一度も会ってないし、小さかったから顔も覚えてないけどね」
にこっと明るく笑ってみせると、新海くんが反応に困ったように視線を揺らす。



