「お母さん、朝はごめんね。お弁当のこと」
小さな声で謝ると、お母さんが優しく目を細めた。
「お母さんもごめんね。約束してたのに」
わたしはうつむくと、ゆるりと首を横に振った。
「さあ、ごはんが炊けたら仁瑚の作ってくれた夕飯を食べようか」
「卵焼きはおいしくないと思うけど……」
「いいのよ。仁瑚が作ってくれたってだけで、美味しいから」
お母さんはそう言って嬉しそうに笑ってくれたけど、わたしの作った料理は卵焼きはもちろん、お味噌汁も激マズだった。
「お味噌汁はね、まず最初に出汁をとるのよ」
お母さんはそう言いながら、お湯に味噌を溶かしただけの激マズスープを文句も言わずに食べてくれた。
なんだかんだで、わたしは結局お母さんにはかなわないらしい。



