看護師として病院の外科病棟で働いているわたしのお母さんは、週に数回夜勤もしていて忙しい。

 お母さんの仕事がハードなのはわかっているし、夜勤の日はお母さんが仕事から帰って来る前にわたしが学校に出かけちゃう。

 だから普段は、お昼ごはんにコンビニのおにぎりや買い置きのパンを持たされたってなんとも思わない。

 だけど、今日だけは違う。

 今日は中学校に入学して初めての体育祭で。

 校庭の応援席で、クラスの友達と一緒にお母さんが作ってくれたお弁当を食べるのをすごく楽しみにしてたのだ。

 それなのに……。

 夜勤明けのお休みだったお母さんは、お弁当を作ることを忘れて朝寝坊。お母さんがわたしに揺り起こされて目覚めたのは、登校する十五分前。

「お弁当は?」と、プンプン怒るわたしに謝りながら、スウェット、スッピンで寝起きのまま自転車に跨ったお母さんは、コンビニでおにぎりをふたつ買ってきた。


「今日、体育祭だよ? みんなで外でお弁当食べるんだよ? なのに、コンビニのおにぎりふたつ?」

 息を切らしながら帰ってきたお母さんに、わたしは思わず、開口一番そう言ってしまった。

 だって、約束してたのにあんまりだ。

 今日だけはきっと、クラスのほぼ全員が家からお弁当を持って来るのに。