初恋ランチタイム


 プリンを食べ終えたあと、わたしはベランダに出て洗濯物を取り込んだ。

 うちはお母さんとわたしのふたり暮らしだから、洗濯物はあまり多くない。取り込んだ洗濯物をせっせと畳んで片付ける。

 普段ならそろそろ夕飯を準備する時間だけど、ソファーで眠るお母さんはまだ起きそうにない。

 うちは、わたしが幼稚園に上がる前からお母さんと二人暮らしだ。

 お母さんとわたしのお父さんは、わたしが生まれる少し前からケンカばかりするようになり……。

 わたしが生まれたあともケンカが絶えず、性格の不一致というやつで離婚したらしい。

 幼稚園の年長のとき、「どうしてうちはお母さんしかいないの?」と何気なく聞いたわたしに、お母さんが少し苦しそうな表情でお父さんとのことを話してくれた。

 わたしがお母さんにお父さんのことを訊いたのは、幼稚園のときの一度きりだ。

 幼稚園に上がる前に家から出て行ったお父さんの顔を、わたしはあまりよく覚えていなかったし、ひどく申し訳なさそうな顔でお父さんのことを話すお母さんの顔を見ていたら、なんだかいたたまれない気持ちになったから。