「仁瑚ちゃん、リレー頑張ってね」
今朝はお弁当のことでケンカして、ロクにお母さんの顔も見ずに出てきたのに。
お母さんはケンカのことなんてもうすっかり忘れてしまったのか、何事もなかったみたいに笑顔でガッツポーズを見せてきた。
寝坊するくらい疲れてたくせに。
わたし、お弁当のことでひどいこと言ったのに。
ちゃんと応援には来てくれたんだ……。
少し目線をそらしながら、お母さんのスマホに向かって手を振ると、入場門に向かって小走りで逃げる。
ちょっと恥ずかしい。でも、嬉しい。
家に帰ったら、お母さんにちゃんと謝ろう。
そう思いながら、リレーでは思いっきり走った。



