応援席の自分の席に座るとき、後ろの端っこの席に座る新海くんの姿が目に留まった。
無表情で校庭を眺めている新海くんは、近寄りがたくて少し怖い雰囲気だ。
だけどわたしは、新海くんの表情が優しく緩む瞬間を知っている。
中庭で見た新海くんの笑顔を思い出したら、また少し心音が速くなっていくような気がする。
体育祭は午後からもプログラム通り順調に進んで行き、最後がリレーだった。
リレーの選手は、各学年、各クラスごとに男女二人ずつ選ばれる。
中学に入ってすぐに行われた体力測定のときに50メートル走で好タイムを出したわたしは、クラスのリレー選手に選ばれていた。
「ニコちゃん、頑張ってね」
カノンとアキナに肩を叩かれて、入場門に並びに行く。その途中、保護者席のそばを通りかかったときに「仁瑚ちゃん」と呼び止められた。
振り向くと、スマホを右手に構えたお母さんが、わたしに手を振っている。



