「笑い事じゃないよ」
「わかってるけど。金髪の理由が、思ってたより優しかったから」
にこっと笑いかけると、新海くんが前髪を触りながら照れたようにうつむく。その表情が新鮮だった。
おにぎりを食べるだけの短い間に、わたしが今まで知らなかった新海くんがどんどん更新されていく気がする。
「別に、優しいとかじゃないよ」
「今の話、みんなにもちゃんと話せばいいのに」
「いや、なんかもう、今さらだし。でも、偶然とはいえ、ニコちゃんに話聞いてもらえてちょっとすっきりした。正直言うとさ、このまま中学三年間、こんなふうに誤解されたまま過ごすのかなーって思ったら、落ち込んじゃうときもあったんだよね」
わたしの顔を横から覗き込むように見てきた新海くんが、ふっと目を細める。
人なつっこい彼の笑顔と、さっきからあたりまえみたいに何度も口にする「ニコちゃん」という呼び方に、ほんの少し心音が速くなった。
新海くんって、思っていたよりも優しいし話しやすいし、それに案外人との距離が近い。
教室にいるときは、誰も寄せ付けないような鋭い顔付きで周囲を牽制しているのに。こっちがきっと、新海くんの素の顔なんだ。
新海くんのウワサの真相や新海くんが見せる自然な表情を知ってるのはクラスの中で——、いや、たぶん、学校の中でわたしだけ。
そう思ったら、なんだか身体中がこそばゆかった。



