野田くんは、みんなでいただきますをするより前に新海くんのオムライスにスプーンを入れてちゃっかりと味見していて。それを横目に、新海くんが若干呆れ顔で笑っていた。

 教室ではいつも唇を固く結んでこわばった表情を浮かべていた新海くんが、今はなんだか楽しそう。

 よかった。だけど……。

 いいな。野田くん。新海くんのオムライスを味見できて。

 あんなふうに、おかずを分けてもらえるのは中庭でのわたしの特権だったのに。

 新海くんが怖い人じゃないってことを、クラスのみんなにわかってもらいたい。

 そう思っていたはずなのに、わたし以外の人の前で笑顔を見せる新海くんの姿に少しだけ複雑な気持ちにもなった。