「ううん。おれのほうこそ、ニコちゃんにお礼言おうと思ってた」
「え?」
「ありがとう。昨日のライン。いろいろ考えてて、ちゃんと返事しなくてごめん」
「そんなの気にしたくていいよ。わたしは、中庭以外でこうして話せただけで夢みたいだし。それに、新海くんが生で料理してるところを見れて嬉しかったよ」
「生でって。なにそれ」
口元に手をあてた新海くんが、ちょっと照れたようにうつむいてククッと笑う。
まさか、調理実習中に新海くんのこんな素の表情が見られるなんて。
昨日の夜にラインでメッセージを送ったときは考えもしなかった現実に、胸がドキドキ鳴った。
これからは、中庭以外でも新海くんに堂々と話しかけていいのかな。
中庭以外でも、こんなふうに新海くんの自然な表情が見られるようになるのかな。
金色の髪を揺らして笑う新海くんのことをドキドキしながら見つめていると、ふいに彼と真正面から視線がぶつかった。



